MMORPG 害人キャラと呼ばれた人と出会った話。

思い出話を。

特定を避けるために、フィクションを交えたノンフィクション小説っぽく書きます。

今から数年前の話。

まだ私がオンラインゲームと言うのを始めて間もない頃でした。

SNSで知り合った友人に誘われ、PK可能なMMORPGを始めました。

ギルド戦争あり、攻城戦、アジト戦あり。

同種族間でのPKももちろんあり。

害(好んでPKなどの迷惑行為をするプレイヤーのこと)もいました。

前述の友人に連れられて入ったギルドは、戦争を放棄していて平和そうに見えましたが、その分マスターは礼儀に厳しい人でした。

無駄な戦いを避けるためには、礼儀を尽くすこと。

少しでも礼を欠けば、ギルドメンバー全員が巻き込まれると思えと。

確かに・・・対人の諍い、特にギルド同士の戦争に首を突っ込んだりして目を付けられると、その個人だけでなく、ギルドも、酷いときはフレンド、ちょっと会話しただけの人、野良であってもPT一緒だった人までPKの対象にされてしまいます。

厳しい世界だな、と思いつつも、ギルド自体が争いに巻き込まれていなかったので、害以外からはPK狙われることもなく、野良のPTも参加できたし、普通に楽しく遊べていました。

私も挨拶とかきちんとしていたし、マスターにも可愛がられ、ヒーラーとして鍛えてもらいました。

しかし、マスターは非常にリアルも多忙な人で、イン時間も合わないことも多くなり、徐々に私はKさんという人と親しくなり、2人でレベリングに狩りしたりすることが多くなりました。

Kさんは重装備のバッファー。私はヒーラー。なので効率はいいのです。

そして、不思議とKさんと一緒のときは害に狙われることが少なかったのでした。

ある日、朝早くにインすると、ギルドにはマスターが1人だけいました。

珍しい時間にいるなあと思って挨拶すると、マスターが言いました。

「ああ、レティス。そろそろ来ると思って待ってたw」

そして、PTが招待が飛んできました。

「ギルチャでも2人きりだからいいんだけど、もし誰かインしてきたらやばいしねw」

「どうしたんですか?」

少し間が空いてから、マスターの言葉がPTチャに流れてきました。

「Kくんと仲いいよね?」

「はい」

「あの子ね、昔、害だったのよ。今は足洗ってるけども」

へ・・・?

ギルド来る前に、そのことも全部正直に告白して、改心してるからってことで入れた。もちろん当時のキャラじゃない、今のKくんは新しく作り直したキャラよ」

昔、害だった人が、新しいキャラを作ってうちのギルドに入って、それがKさんということ

「改心もしてる。あんたの面倒見てるのも、仲間として大切に思ってるからなのはわかる。でも、一度害に染まった人間は、いつまた害に戻らないとは限らない。だからレティスには一応忠告しておこうと思ったの」

あの優しいKさんが元害・・・

「わかりました。気をつけて接します」

私は冷静に、型どおりの返事をした。

そして、マスターは続けた。

「あと、装備とかアイテムとか、もちろんゲーム内通貨ももらわないようにして」

「そういうのはもらったことありませんし、そういうのもらうの嫌いなんでw」

「なら大丈夫ね。これから先も気をつけて」

マスターがKさんから何も受け取るなと忠告した意味はこうだった。

キャラのレベルにしては、あまりにも装備の揃え方が早い。

断言は出来ないけど、リアルマネートレードを行っている可能性も否定できないと。

これが本当ならば規約違反なので、大変なことになると。

だから、受け取った側も処罰されるから、気をつけてと。

Kさんは、ひたすら私のレベリングを手伝ってくれていただけだ。

その後、マスターと2人で軽く狩りをして、談笑してからログアウトするのを見送った。

その数日後。

今度はKさんから話をしたいと言われ、PT招待を受けた。

「実は、そろそろギルドを抜けようって思ってる」

Kさんはまずこの言葉をチャットに流した。

「どうして・・・ですか?」

私は震える手でチャットを打った。

「もしかしたら、聞いてるかもしれないけど。俺、害やってたことあるんだよ」

「・・・でも今は違うんでしょ?」

「うん。このキャラになってからはやってない」

私は返答に困り、しばらく考え込んでしまった。

「どうして害になったか、その理由をマスターにも話したけど、レティスさんにも知っておいてもらいたくてね。それで話を聞いてもらいたかったんだ」

Kさんは、昔ギルドマスターをやってたことがあるとのこと。

その当時、害とは知らずにフィールドで倒れていた低レベルのキャラを蘇生してしまった。

それから大手のギルドや、他の害ギルドからも目を付けられ、嫌がらせを受けるようになった。

それがKさん個人だけでなく、Kさんのギルドメンバーにまで及んでしまい、ギルドが崩壊。

自分も行き場がなくなり、キャラを削除して引退しようとしていたところ、手を差し伸べたのが害ギルドだったと言うこと。

そこで世話になるようになり、害行為に興じるようになってしまったとのこと。

Kさんは、害ギルドに助けられるまで、どれだけ辛い思いをしたか、切々と語りました。

害行為を続けたのは、ゲームに対する復讐だったと。

そして、今のうちのマスターに出会ったとのことだったけど、

その経緯については、きちんと話してはくれませんでした。

その出会いが、Kさんを害から改心させたのだというのは理解できました。

「でも、やっぱり後ろめたさはあるし、俺の中ではまこのゲームの世界を許せてないのかもしれない」

Kさんは淡々と語った後、こう言った。

「害って楽しいんだよ?」

「でも、ダメだよ・・・それは」

「わかってる。でも別のキャラ作って、当時の害の仲間とは今でもチャットしたりしてるよ。悪い奴らじゃないんだよ、本当は」

確かに、これはゲームだ。

PKは許されている。

害行為に対してもペナルティもある。

そんなルールの上で、害行為という遊び方を選ぶプレイヤーもいるのだ。

「レティスさんもやってみればいいよ。別キャラ作ればいいんだよ」

「絶対にやりません!」

チャットの文章であっても、相当強い言葉になってたと思う。

私は害行為はやらない。

例えゲームであっても、迷惑行為はしたくない。

何より、マスターや他の仲間を欺くことはしたくない。

「そう言われるのはわかってたよw」

Kさんは、しばらく沈黙した後、こう言った。

「ギルド抜ける前に、フレンド登録させてもらっていいかな?」

「もちろんです。でも、一つだけ約束してほしいことがあるのです」

「うん、何かな?」

「二度と害には戻らないで」

「わかってるよw」

次に私がインしたときは、Kさんはギルドから抜けていました。

またまた私を待っていたマスターがいて、Kさんの話をしました。

「マスター、私思うんですが」

「Kくんのことかな?」

「はい。私は、彼が害に戻る様な気がするのです

「アンタも同じこと思ったんだねえw」

「害に戻らないでってお願いしたし、約束もしました。でもそれを破られたとしても、私はKさんを嫌いになれないです。一緒に過ごした時間はホンモノです。Kさんの優しさも嘘ではないと思うから・・・」

「わかるよ、その気持ちはw」

しばらくKさんと会うことはなかったけれど、フレンドリストを見たら、

インした履歴も見えたし、新たなギルドに加入してたのもわかりました。

それは、害ギルドではなく、初めて見る名前のギルドだったので安堵したのを覚えています。

私はKさんの抜けた後、マスターの繋がりで一気にフレンドも増やし、

そのおかげでレベリングもはかどり、PT募集してもすぐ埋まるほど、サーバー内での名前も知られるようになっていました。

そんなとき、Kさんと再会しました。

「やあ、久しぶり!俺のレベル抜いちゃったんだねw」

ささやきが飛んできました。

軽く挨拶と近況報告をして、別れました。

Kさんがギルドにいた頃は、すれ違ったらバフを付けてくれたのに、そのときはなしでした。

今思うと、それはもしかして・・・と邪推してしまうのです。

それからKさんがログインすることはありませんでした。

フレンドリストには、Kさんの名前は削除せずにずっと置いてあります。

彼自身が私を切らない限り、フレンドリストから彼の名前が消えることはないでしょう。

私が引退するまで、彼のログインは途絶えたままでした。

害にはその後も何度か狩場で襲われかけましたが、PKされるまでには至りませんでした。

向かってこられて、こちらが身構えたら、さっと踵を返されたり、そういうのもありました。

もしかしたら、Kさんの別キャラなんじゃないかな?と思ってしまうこともありました。

その後もいろんな害の人に会いました。

時には、害になる前に同じPTで遊んだことのある人も。

プレイするのに慣れてなくて何度も失敗してPTメンバーから罵倒された人とか。

そういう人が害に混じっているのを見かけると、心が痛みました。

害になる人は、害になる、何らかの理由があるのだ。

「害プレイする人は、その人なりにゲームを楽しんでるんだろうね」

フレンドのPTでもそういう話を良くしていました。

「でもさ、これリアルだったら、あいつらのやってることは犯罪なんだよ」

そう主張する人もいましたが、これはそういう行為が許されたゲームだし、

行き過ぎた害行為はゲーム内ルールで裁かれています。

そして、私たちにもそれを処罰できるルールは適用されているし、それをやればいいのです。

ただ、やはり仲良くなることだけはできません。

それは、そのゲームの仕様上、仕方のないことでした。

関わるだけで、かつてのKさんのように、居場所を失ってしまうのですから。

マスターも、昔は害相手に相当やり合ったことがあるそうです。

普段穏やかな人なので、どんな戦い方をするのかは想像もつきませんが、

それ以来、害はマスターに対して一目置くようになったのだとか。

害のほとんどが、私を見ても攻撃してこないのは、このギルドのマークがついてるからなんだと、納得しました。

(Kさんのせいではなかったのでした^^;)

Kさんも多分、その当時を知ってる人だったんでしょう。

一体マスターが何をしでかしたのかは、いまだに謎ではあります。

しかし、マスターはギルチャでこう話したことがあります。

「だって、ゲームとは言え、中身は人がやってるわけじゃない?

だから、害であろうと相手は人なのよ。それを忘れないようにしてるだけ」

ギルドではマスターとして慕われ、

野良でPT募集しても一瞬で埋まると言う交流の深さを持つ人。

私もいまだにマスターの影響を受けてる。

何度も言うけど、マスターがどんな伝説を残したのかは、未だに謎のまま。

多分、私もマスターに出会ってなかったら、害になってたかもしれない。

逆に、害を憎みすぎて、Kさんをも忌み嫌ったかもしれない。

マスターはその後、ゲームを休止することになり、私も引退してそれっきり。

あの殺伐としたゲームは、今でも基本無料になることなく、サービスは続いている。

人の本質を捉えたゲームなんだろうなと思う。

もし、復帰することがあれば、またマスターとも語り合いたいし、

Kさんにも会いたいと思う。

ゲームの中にも、それぞれの人の生き方が表れてるのか、

それとも理想を投影してるのか、

いつもブログの記事でも書いてるけど、ホントにこの世界の住人を見ていると面白いなと思うのです。

願わくは、Kさんがどこかで楽しく過ごされてますように。

というわけで、非常に長い思い出話でした。

読んでくださったあなたに感謝を^^

追記:

そのゲーム内で使われていたので「害」と言う言葉を使わせていただきましたが、PK行為を完全否定しているものではありません。PK以外にも人に迷惑を書ける行為はたくさんありますし、ハラスメント行為として、規約違反に触れるようなことがなければ、遊び方はその人の自由だと個人的に思います。

私は・・・PKは苦手です^^;

スポンサーリンク
アドセンス
スポンサーリンク